ぶるぶる見聞録

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妖怪はどこから

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先日、妖怪好きの友人と「妖怪の何が好きなのか」というテーマで議論する機会がありました。友人は妖怪のビジュアルが好きなのだそう。なるほど、妖怪はいろんな種類がいて、それぞれ特徴的なデザインを持っています。妖怪とデザインというのは密接な関係があると言えるでしょう。カードにすればコレクターズアイテムにもなりますし、ビジュアルは妖怪の大きな魅力の一つです。でも自分はビジュアルにはさほど惹かれません。上手い絵師の作品ならともかく、わりと多く残されてる落書きのような絵の妖怪にはさほど魅力は感じないのです。では自分は妖怪の何に対して惹かれてるのだろう。

人は妖怪と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。河童?天狗?それとも一つ目小僧? もちろんみんな立派な妖怪です。でも“妖怪”という言葉は、実は昔はもっと違った意味で使われていました。例えば、家がガタガタと鳴りだす現象が起きたとします。人はとても怖がり、その現象を妖怪「家鳴り」と名付けました。また、山で大きな声を出すと声が返ってきます。それを不気味がった人によって、その現象は妖怪「ヤマビコ」と呼ばれるようになりました。妖怪とは元々は怪奇な“現象”全般を指す言葉だったのです。

現象に名前が付けられると、今度は形が与えられるようになりました。「家鳴り」は家を揺すっている子鬼の姿、「ヤマビコ」は犬のような姿で描かれています。絵描き達は想像力を働かせ、あるいは何かの真似をして、妖怪に形を与えていきました。何だかよく分からないぼんやりとした存在だった妖怪は、描かれることよってようやく具体的なイメージを持つことができたのです。こうして妖怪は”現象”から”存在”へと成っていきました。

存在が確立すると、次に起こったのは妖怪の“キャラクター化”です。江戸時代の黄表紙では愛らしい妖怪が登場し、庶民を楽しませるようになりました。現代の、漫画やテレビで妖怪が人々を楽しませてるのと一緒です。かつて恐怖の対象でしかなかった妖怪は、いつしか人を楽しませるようになっていったのです。

人は正体の分からないものを恐れます。その恐怖と上手く付き合う為の手段が妖怪だったのです。恐怖の対象は妖怪という装置を使う事によって、名前を得、存在を得、やがて子どもを笑わせる存在にまで成長しました。日本人はこうして恐怖と寄り添って生きてきたのです。

もちろんこれは妖怪の成り立ちのほんの一例にしか過ぎません。でも、妖怪を紐解けば昔の人が何を恐れ、何に驚き、何を大切にしてきたのかが、歴史資料を見るのとはまた別の方向から見えてくるのです。友人にも言われました。あなたが好きなのはたぶん妖怪ではなく人間の方なのだと。そうかもしれません。自分は妖怪そのものというより、妖怪を通して人が何を考えていたのかと想像するのが好きなのですね。